私が渡米した30年ほど前、アメリカの道路は想像以上に日本車で溢れかえっていました。
おかげでホームシックにならずに済んだと言っても良いくらいなのですが、2010年、トヨタのプリウスのアクセル急発進の事故が相次いだ時、その勢いに翳りが差しました。
とうとう、日本車への「信頼」が崩れる時が来たかと思いました。トヨタは躍起になって原因究明を急ぎましたが、事態は、米国議会がトヨタの責任者を召喚するまでに発展。
社長に就任して間もない豊田章男氏が「東京裁判」さながらに吊るし上げられるその様子を、たまたまテレビで見ていて「アメリカとはなんと怖いところだ」と感じたのを覚えています。
証言席で豊田氏は、自分の苗字を冠する会社が作った車が、どれほどに信頼できるものかをたどたどしいながらも通訳無しで力説しました。容赦ないアメリカの国会に一人乗り込んだ彼を、「こんな頼もしい日本人みたことない!」と感動し、素晴らしい方だと心強く感じたものでした。
議会での証言が終わり、テレビは議会内の別室に案内された同氏を映し出していました。そこには全米から集まったトヨタのディーラーやユーザが集まっており、次々と豊田氏に駆け寄り、肩を叩いてはその苦労をねぎらいました。
ふと、カメラは同氏の頬に涙がつたったのを映し出しました。その瞬間、私は「この人が社長をやっている会社の車なら信用できる」と確信し、以降、車はトヨタ車しか買わないことにしています。
円安の影響もあって、今、アメリカには色んな日本製品が続々と輸出されています。どこの国のものよりも日本製品が信頼されているのは、90年代の自動車交渉以来、トヨタをはじめとする日本車メーカーが米国での現地生産にこだわり、地道に日本製品への信頼への道筋をつけてくれていたおかげに他なりません。
あんな大戦を経験したかつての敵対国にも関わらず、ここまで日本や日本人が信頼されているのは、コツコツと実直に「良いもの」「信用されるもの」を作り続けてきた先人がいたからです。
「日本人が作ったものだから大丈夫!」
今や、多くのアメリカ人が口を揃えて言います。ようやく Japan Unboxedを立ち上げることができ、私もその足跡に続きたい。もっと日本の「美味しい」や「良いもの」をアメリカに広めれば、ひいては日本人の「人を想う」理念が世界を救うことになると信じているからです。
2023年にようやくスタートラインに立つことが出来たばかりですが、これからの輸出ビジネスの可能性に、我ながら武者震いする思いです。
Japan Unboxed 代表